年長は、水が入った田んぼに全員が裸足で入り、足を道具に土と水をこねてなじませる「代かき」を行った。「こねる」と自覚しなくても、何度も歩いていれば自然にこなれていく。いつまでもやめないほど泥んこに取り憑かれる子も何人かいたので、最後はその子たちで「ようい、ドン」で田んぼを走り抜けた。
子どもは時として予想を超えた質問をしてくる。年長K君が「『こども』って、なんさいまで?」と聞いてきた。園の入口の電子錠を開けるボタンに書かれている表示を見て、もうすぐ6歳になるボクは、そろそろ自分でボタンを押してもいいのではないか、と考えたらしい。
私も職員も、どう答えていいか迷ったまま、ホースをつなぐために水道の蛇口を取り替える作業に入った。当のK君もやりたがったので、スパナを渡したら、苦労しつつも何とかネジをゆるめて交換し、締め付けまで済んだ。私など3人の職員は「できた、できた」「よかった」「上手だったね」などと言い、片づけに入ろうとした。ところがK君が、締め付けたネジをもう一度緩めはじめた。他の子も「やりたいやりたい」と手を出した。そのとたん、A職員が手を打った「これよ!大人と子どもの違いは!」。ちょっと哲学してみました。
空いているプランターに自然に生えたカタバミ。自然保育アドバイザーのK氏が「食べられますよ」と言ったので、多くの子がちぎって食べ始め、どんどんブームが広がった。K氏は「食べられる=美味しいではありません」とつけ加えた。何はともあれ、子どもは自然の中で無意識のうちに五感をフルに働かせる。あとで生きてくるのはそんな経験だ、と、これもK氏の言葉。
だからですね。グミの木だって、とげがたくさんあるリスクをものともせず、登って実を取ろうとする。これも子どもによく見られる魅力的な行動。