43回目の運動会は、暑さも考慮して例年より1週間遅く、学年毎に時間を変えて開催された。年少のS組対T組の綱引きは、どちらも譲らぬ熱戦。決着がつかないので10秒間の延長戦の末S組の勝利。そうまでして勝敗をつけなくてはいけないのか?→いけないのです!子どもは勝てば喜び、負ければ口惜しがる。そのどちらも育ちにつながるが、引き分けでは消化しきれないものが残るので、決めてやった方が「幼児期にふさわしい」のです。
毎年やっているかけっこだが、去年までの直線ではなく、年少3クラスが見守る中を1周回り、仲間が待つところに帰る方式にした。その方がお互いを見合い自然に応援が出るし、子どもの気持ちに自然になじむと考えた。形を守ることではなく、「子どもにとって」を追い求め続け、やめないことを伝統と呼びたい。
最後は親子が電車に乗って走る競技。保護者に参加していただく種目も、決してオマケではなく、運動会の重要な要素。
年中組のかけっこも、年少同様、仲間の回りを1周走る形に変更した。こうすると、園児と保護者の声援や拍手を左右から受けながら走ることになる。当然力も湧いてくる。
この形にしたからかどうかは分からないが、転んだり不安になっている子を見ると、すぐに誰かが手を差し伸べたり寄り添ったりする姿が増えたような気がする。ただ声援を送っているだけではなく、互いをよく感じ取っているということだろう。「くやしかったことは?」と聞かれて「T君が病気で休んだこと」と答えた子もいた。
「なんで勝ったんだと思う?私がめっちゃ引っ張ったからよ」と親に報告した子がいた。幼児の自己中心性が表れている。しかし、こういうことに満足感を覚えながら幼児期を過ごした子は、大人になればジコチューにはならないだろう。写真は4人グループでお宝に見立てた重い砂袋を運ぶレース。
そして、年長は綱引きからスタート。審判の「ようい!」の声がかかると、園児、保護者、職員など200人以上いる会場が、水を打ったように静かになった。そして次の瞬間かけ声と声援に変わり、最初リードされたA組がじわじわと引き戻すと割れるような拍手が沸き起こった。当園ではBGMは流さない。なぜなら、これらの全てをかき消してしまうから。
自分が選んだ技を一人ずつ見てもらう種目。園庭の隅にある雲梯は客席からは遠いが、その分逆に視線の集中を感じる。緊張で手に汗をかくのか、いつもより滑りやすくなるが、ふんばる。
そして、クラス対抗ゲーム「ペッたおし」も最終決戦。今までで得点差は一番少なかったが、結果はA組の4連敗。しかし、自分たちのアイデアを最後まで大切にし、工夫を重ねて完成度を高めた姿には心から拍手を送りたい。見学に来られた東京の幼稚園長や研究者を目指す大学院生も、身を乗り出して注目されていた。本当にいい試合でした。
そして、もしかしたら最大のドラマだったのは最後のリレー。2クラスが抜きつ抜かれつの大熱戦。27人がつないだバトンをほぼ同時に受け取ったアンカーの2人は、1歩も譲らないままの併走でコースを1周し、ほとんど同時にゴールテープを切った。真横から見ていた職員と写真で判定し、A組の勝ちと発表したが、そこまで勝ち負けにこだわった理由は、年少のところで書いたとおり。本当にいい運動会でした。子どもたち、保護者の皆様、ありがとうございました。(一部の写真は石田哲弘氏撮影)
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